Saturday, January 31, 2009

キャンプで学ぶ

 アブちゃんに出会ってキャンプを覚えた。有無を言わせず。

 初めてのキャンプ。あれは、大隈半島の山の裾のキャンプ場。冬近くで宿泊客は2人だけ。テントを建ててから夕方の散歩へ。いのししが横切る自然いっぱいの山の中、日照時間も少なく、もう大分寒くなっていた。
 「ちょっと寒いなぁ。」と思いながら一晩中熟睡もできずに翌朝目起きたら、外に置いてあった靴が霜にやられていた。靴も靴の回りも霜で真っ白だった。
 「こんな靴をはいたら、私の足がしもやけだよぉー。」と泣きたかったが、付き合ってまだ日も浅いそのころに文句は言えなかった。

 特に思い出深いのは石垣島でのキャンプ。船に乗って川の上流で降りる。そこからジャングルの中を大きなリュックを担いで崖を上り下りし、夕方以降は人気のないジャングルでテントを張る。
 ちょっと川へお散歩へ。自分たちのライト以外明かりのない森の中。テントに帰って休もうとしたら、テントの真ん中でヒルが頭を持ち上げ血を吸う準備をしていた。どうにかこうにかそれをテントから追い出し就寝。
 ヒルに怯えながらも満点の星空を見ながら熟睡。なんせ、大変な運動量で疲れたからね。

 屋久島の九州で1番高い山といわれている宮之浦だけに登ったときもまた結構な忍耐だった。
テレビで見る分には神秘的で「行ってみたいなぁ。」と確かにあこがれるけど、あなた、実際登るって「なんで、登るって言っちゃたんだろう。」と嘆くしかない。
 でも、本当に「もののけ姫」の世界にいるみたいで行くだけの価値はある。ただ、休憩しているとき、ヒルにかまれたけれど。まあ、それも次の日の夜中の海がめの産卵を見たら人に語れるいい思い出になった。

 数あるキャンプ体験の中でもアブちゃんを疑ったのが、バージニア州のシャナンドア国立公園でのキャンプ。「熊に注意!」という看板を見ながら、キャンプ場でもないまさしく山の真ん中でキャンプ。食べ物は気につるし、食事も遠いところでして、テントのそばに食品のにおいがしないように細心の注意を払う。
 そして、夜。アブちゃんは慣れたものですぐに熟睡。私は熊が怖くて寝れやしない。でも、さすがに登山の疲れが出てうとうとしてきたころ、「ハア、ハア。」と怪しげな息遣いが聞こえる。どうやらアブちゃんの息遣いではなさそうだ。その上、なんだか重そうな動物が移動するような音。テントの周りを歩き回っているふうな。恐ろしすぎて、あぶちゃんを起こした。でも、何を勘違いしたのか、アブちゃんは自分のいびきがうるさくて起こされたと思ったらしく「あ、ごめん。うるさかった?」と言って、再び眠りへ。「違うよ、何かいるよ!」と言ったら、「ああ、そうか。」と言ってまた超熟睡。それから以降、起きなかった。「この人は本当にいざというとき守ってくれるのか?」と悩んだ夜だった。

 
 アブちゃんが日本を去るとき、「僕はまだ旅行したり学校へ行ったりしたいから、このつきあいを続けていくことは難しい。だから、別れよう。」と言ったので、泣く泣く別れた。
 『あのようなキャンプに毎回つきあう女性がいたとしても、タイミングよく出会うことはそうそうないと思うよ。』と言いはしなかったが、そう思いながら見送った。それからアブちゃんは南米や南極を回り、大学院に戻ってから気づいたらしい。

 「旅行してても1人で旅をしていた今までのように楽しいと思わなかったよ。いろんなこと一緒に喜んだり感動したりする人がいてほしいなと思ったよ。そして、それが君だということに気づいたんだ。」とメールをくれた。

 ようやく気づいたかぁ。よかった、よかった。
 そして、とんとん拍子に婚約、結婚。

 1度別れたから、相手の尊さやいっしょに過ごすことの貴重さがわかるんだよね。だから、いつも互いに感謝し合えるんだよね、と思う。たとえ、次のキャンプでまた新たな冒険の記録が作られようとも、私たちは共に山や谷を乗り越えていくことだろう。
 

No comments: